第9回 会社の財産になる(1)

●このように感じたことはありませんか?

青木さんは職場で、財務データを駆使して目を自分なりに工夫を凝らした報告書を作成していました。しかし最初の数ヶ月が過ぎてみると、仕事に対してやる気が起こらなくなり、退屈に感じるようになってしまったのです。報告書づくりは時間がかかるばかりで、ほとんど価値を見いだせない単調な作業に思えてきました。

やがて1日をもっと楽しく過ごすためだけに、ネットサーフィンや、電話で話をするといった他の作業をして自分の時間をつぶすようになっていきました。気乗りしない報告書づくりに取りかかるのは期限ぎりぎりになってからになり、上司への提出が遅れるようになったのです。

彼女はこのままではいけないことを自覚しており、同僚の池田さんに悩みを打ち明けました。彼は話をすべて聞いたあと、以下の質問を自問してみるよう提案しました。

  1. 自分の組織は世界に対してどんな価値を提供しているか
  2. 自分の部門は組織にどう貢献しているか
  3. 自分はなぜここで働いているのか
  4. 自分の仕事はどのように部門や組織に貢献しているか
  5. 自分の仕事は人間として自分が成長する上でどのように役立っているか

●なぜあなたは今の会社にいるのか? なぜその仕事をしているのか?

これらの質問に回答することはとても重要なことです。しっかりと答えられないのであれば、仕事をするモチベーションなどとても湧かないでしょうし、出社するのさえ、気が進まないでしょう。早急にそれも心の底から全身全霊でイエスと答えられるように変われる必要があります。

●意外に多い“ハシゴのかけ違え症候群”

学生時代に就職活動をして、大手の企業から内定をもらえたのでその会社に勤務することにした。しかしいざ入社してみると、想像していたイメージとは違い、転職した。

「3割の新入社員が3年以内に転職する」といわれるこの時代、目的を意識せずにスタートを切るビジネス・パーソンが増えているようです。スティーブン・R・コヴィー博士は、目の前のタスクをこなすことに懸命になりすぎ、そのタスクを完成させてから目的とのズレに気づく行為を“ハシゴのかけ違え”と称しました。ハシゴをかけて、昇ってから、ここにかけるべきではなかったと気づくというわけです。

しかしこれはあまりにももったいないことです。ハシゴをかける位置について事前にしっかり考え、正しい位置にかけていれば、労力やコストをどれだけ節減できたことでしょう。

●会社に所属する目的、仕事の目的を再認識するための5つの質問

青木さんが池田さんから示された質問。これらが会社に所属する目的、仕事の目的を再認識するためのキーとなります。仕事に対する意欲がこれまでとは全く違ってくるかもしれません。じっくり考えていきましょう。

  1. 自分の組織は世界に対してどんな価値を提供しているか
  2. 自分の部門は組織にどう貢献しているか
  3. 自分はなぜここで働いているのか
  4. 自分の仕事はどのように部門や組織に貢献しているか
  5. 自分の仕事は人間として自分が成長する上でどのように役立っているか

1.自分の組織は世界に対してどんな価値を提供しているか

まず、あなたの組織がどのような貢献を果たしているのかを確認します。大企業の場合は特に、会社全体の社会的な貢献を定義するのは難しいかもしれません。しかしそれこそがあなたの会社についてあなたが理解していなかった点であり、今が理解するチャンスなのです。会社のホームページや外向けのパンフレットなどを参考にしましょう。

例)人材開発においてクライアントが求める結果を、クライアントが手にすることができるように、最大限の努力を行っている。(25歳、人材開発会社勤務、営業職)

2.自分の部門は組織にどう貢献しているか

自分の部門は、あなたがより深くかかわっている組織です。もう一度、あなたの部門の貢献を考えてみましょう。自分が把握していない部分での活躍があるかもしれません。周りの同僚や上司にインタビューしてみるのも有効といえます。積極的に情報を集めましょう。

例)ファイナンス部門として金銭の管理を一手に引き受けている。部長いわく、我々の部署がなかったら、創業以来黒字を継続することはできなかったそうだ。(27歳、家電メーカー勤務、財務職)

普段からこういったことを考えていなければ、おそらく簡単には回答できない質問だと思います。しかし、これらに答えられないのであれば、あなたの仕事に対する取り組み意識が高まることはないでしょう。