古典に学ぶタイムマネジメント|100回 ガガーリン

今回、紹介するのは、1961年、ボストーク1号に単身で搭乗、世界で初めて有人宇宙飛行を成功させたユーリー・ガガーリン(1934-1968)です。彼が語ったとされる「地球は青かった」のコメントはあまりにも有名です。
当時の宇宙開発はいわば初期のステージで不確定要素が多く、懐疑的な声や不理解者による妨害活動なども少なくなかったようです。そのような逆境を乗り越えてガガーリンが掴み取った栄光は、人類全体にとっても大きな意味があるものでした。そこに至るまでの彼の歩み、そのパーソナリティを見ていきましょう。

●自らの命と引き換えにしてでも仲間の命を護りたい

ジャーナリストのヤロスラフ・ゴロワノフは、ガガーリンのふるまいがおかしいことに気づいた。「ガガーリンは防護宇宙服を着せてほしいと訴えました。コマロフが完全に飛行できる状態であることは明白で、打ちあげの時刻までもう三、四時間しか残っていませんでした。ガガーリンはいきなり怒鳴りはじめ、あれこれ要求しはじめたのです。突然様子がおかしくなったのです」(略)ルサイエフやほかの関係者は、ほぼ確実な死が待っているコマロフを救うため、ガガーリンが強引に飛びに行こうとしたのだと主張している。

ここで名の出ているコマロフとは、1967年、ソユーズ1号で宇宙探索に出たものの帰還時の事故により40歳の若さで亡くなったウラジーミル・コマロフを指しています。ガガーリンとは宇宙飛行士選抜試験からの古いつきあいで、二人の間には強固な信頼関係がありました。

ソユーズ1号には発射以前から不具合を発生する可能性が指摘されていました。しかし、米ソの宇宙開発競争やロシア革命50周年といった政治的な背景もあり、故障リスクを承知でソ連当局は打ち上げを強行したのです。
引用にあるのは、その当日のガガーリンの言動です。親友の代わりに自身が犠牲になるというのですから、ガガーリンが部下や同僚から信頼の厚い人物であったことがよく伝わってきます。

「7つの習慣」の提唱者である故・スティーブン・R・コヴィー博士は、著書『7つの習慣 成功には原則があった!』(キングベアー出版)において、人格は言葉よりも雄弁であると述べています。

「表面的な成功(才能などに対する社会的評価)に恵まれた人の中でも、こうした真の成功(優れた人格を持つこと)を達成していない人もいる。しかし、遅かれ早かれ、このことは、その人の待つ長期的な人間関係のすべて-仕事仲間、夫・妻、友人、大きな悩みを抱えている子供など-において、表れてくるだろう。人格は、言葉よりもはるかに雄弁だからである」

宇宙飛行士のような、直接、自らの命を懸けるような事態というのはそうそうあるものではありませんが、日々の小さな局面の中でも、相手への敬意や気遣いを表現することは可能であり、その積み重ねが我々の人格や評価を形成していきます。エグゼクティブはもとより、管理職やリーダーを目指す人間であれば、「自身の人格」を常に磨き、振り返り、行動の中で体現していく必要があるでしょう。

●すべてが報われた瞬間

飛行は順調に続いています。機器は正常に機能しています。受信状態も実に良好。地球の様子を観察してみようと思います。視界良好。雲が見えます。すべてが見えます。実に美しい!

上記の言葉は、世界初の宇宙有人飛行を達成したガガーリンに対し、地上の管制官が「宇宙から地球を見た際の感想」を求めた際のものです。
冒頭にも述べたように、宇宙までの道のりはガガーリンにとって、決して短くも平坦なものでもありませんでした。技術も未熟な時代のこと、実現させるまでの長い待機期間中、彼の心が休まる日はなかったのではないでしょうか。しかし彼はついに宇宙へ到達し、このような言葉を残すことができたのです。

スケールは違えども、我々の職場においても、プロジェクトの完了や売り上げ予算の達成など、それまでのすべての努力が報われる瞬間が存在します。その果実を味わうためには、周到な事前の準備が必要になるのは言うまでもなく、中でも「自分自身の心の準備」の果たす役割を無視することはできません。

前出のコヴィー博士は、著書『第8の習慣 「効果」から「偉大」へ』(キングベアー出版)の中で、作業に取り掛かる前にビジョンを構築することの大切さについて、以下のように述べています。

「ビジョンとは、知性の目で未来の状態を見ることである。想像力を働かせることである。あらゆるものは二度つくられる。最初は知的な創造、次が物的な創造だ。第一の創造がビジョンであり、それは個人あるいは組織が自らを創造し直すプロセスの第一歩である」

ガガーリンも、そしてどんな偉大なイノベーターも、きっとこの「第一の創造」を避けて通ってはいないでしょう。その取り組みの先に何があるか、これを明確に意識すること、さらに何度でも意識し直すことで、我々の知的生産性はまだまだ向上していくはずです。

(参考:『ガガーリン 世界初の宇宙飛行士、伝説の裏側で』、ジェイミー・ドーラン ピアーズ・ビゾニー著、日暮雅通訳、河出書房新社)

 

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