第33回 ラッセルに学ぶ

数学者、論理学者、哲学者、そしてノーベル文学賞をも受賞した文学者。さまざまな顔を持ったバートランド・ラッセル(1872-1970)は、英国の伯爵という身分でありながら、社会運動に身を投じるなど自分の正義を貫き通したその姿勢は、著作物などからもうかがい知ることができます。

彼の代表作である『幸福論』は、不幸の原因と幸福になるための条件を説き、大ベストセラーとなりました。約100年前の主張が、現代においても通用することには、驚かざるを得ません。

●不幸の原因 -競争-

だれでもいい、アメリカ人や、イギリスのビジネスマンに向かって、生活の楽しみを一番じゃまするのは何かと聞いてみるとよい。彼は、「生存競争だ」と答えるだろう。彼は、まったく本心からこう言うだろうし、そう信じこんでもいるだろう。ある意味では、これは本当だ。しかし、別の、それもきわめて重要な意味では、これは根本的にまちがっている。(略)

人びとが生存競争という言葉で意味しているのは、実は、成功のための競争にほかならない。この競争に参加しているとき、人びとが恐れているのは、あすの朝食にありつけないのではないか、ということではなくて、隣近所の人たちを追い越すことができないのではないか、ということである。

成功の定義は人それぞれでしょう。なぜならば「何を大切にするか」は1人ひとり違うからです。

しかし、現代社会は一般的に、経済成長や収入、財産といったものを成功の定義として押し付けてくるような印象があります。経済的、社会的な成功は、私たちのどれくらいにとって「成功」なのでしょうか。

スティーブン・R・コヴィー博士は、原則に基づいていない成功を、真の成功とはしていません。私たちが何を本当に達成したいのか、どのようになりたいのか。こういったものを探求することこそが大切であると語っています。経済的、社会的な成功は、あくまで2次的な成功であり、貢献を果たすこと、人格的に成熟することといった、1次的な成功を収めない限り、真の成功ではないということです。

「競争」こそが不幸の原因というラッセルの主張は、昔も今も変わらず説得力があるといえるでしょう。

●幸福をもたらす姿勢 -欲張らない-

世界は果てしなく広く、私たち自身の力は微々たるものである。もしも、私たちの幸福のすべてがまったく個人的な環境と結びついているのであれば、どうしても、人生に与えられる以上のものを人生に求めるようになる。そして、あまりにも多くを求めることは、得られるものも得られなくなるいちばん確かな方法である。

ラッセルは幸福をもたらす姿勢として、強欲にならない姿勢を挙げています。そして、あまりにも多くのことを求めようとするあまり、得られるものも得られなくなると戒めています。

私たちは、より多くの成果を出そうと、合理化、効率化を図り、生産性を上げようとします。それはそれで必要なことではありますが、「何をするか」を選択することは、「何をしないか」を選択することでもあります。

現代のように、何もかも容易に得られるようになってしまった時代にこそ、何を本当に得たいのかを明確に意識し、それに向かって進むことこそが、真の「幸福」をもたらすのかもしれません。

(参考:『幸福論』、ラッセル著、安藤貞雄訳、岩波文庫)

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