古典に学ぶタイムマネジメント|107回 ジャック・ロビンソン

アフリカン・アメリカン初のメジャーリーガーとしての野球の功績だけでなく、公民権運動においても中心的役割を担ったジャック・ロビンソン(1919-1972)は、スタジアムの内外においてさまざまな活躍をした人物といえます。彼はさまざまな逆境をものともせず、MVPを獲得するなどの成績が評価され、MLB機構による野球殿堂入りを果たすとともに、彼がつけた背番号42は全球団における永久欠番となりました。彼が成熟した人格を維持し続けた原点はどのような原則にあるのでしょうか。

●仕返ししない勇気

「リッキーさん(編注:当時入団交渉を行っていたマイナーリーグチームのオーナー)、あなたは仕返しするのが恐いような、黒人を探しているんですか?」(略)
「ロビンソン君、わしは仕返ししないでおれるだけの勇気を持っている選手を探しているんだよ。(略)彼らはこうして君をののしり、挑発する。君に反抗されようと、あらゆることもしかけてくるだろう。それで球界で人種騒動を起こそうと仕向け、それによって、黒人が大リーグに入ることは許されるべきでないことを世間に示そうとするのだ。ファンが驚いて球場にやってくることを恐がる-それが狙いになるんだ。」

ロビンソンが最初に入団したマイナーリーグ球団モントリオール・ロイヤルズのオーナーとの、入団前の会話です。ロビンソンも覚悟していたとはいえ、今一度その覚悟をオーナーも確認しています。いくら訓練を積み、周囲から気にするなと言われても、外部からの挑発に乗ることなく、耐え続けるのはたやすいことではありません。ロビンソンの自伝にはそういった挑発行為について多くが語られていませんが、妨害行為が相当なものであったことは想像できます。

これを成功させた要因はどういったものでしょう。さまざまな考え方がありますが、ここでは彼の信念の強さを取り上げます。当時社会的地位が高いとは言えなかった人々のことを思い、長い目で状況を俯瞰し、自身の「関心の輪」でなく「影響の輪」にフォーカスしたロビンソン。

「7つの習慣」の提唱者、故スティーブン・R・コヴィー博士は著書『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版)において次のように述べています。

ミッションを持っていれば、主体性を発揮する土台ができているといえる。そして自分の人生に方向性を与えてくれるビジョンと価値観を持つことになり、長期的または短期的な目標を設定する基本的な方向付けができあがる。

少なくともこの入団を決意した時点で、彼は確固たるミッションを持っていたのでしょう。そして目標を設定します。そうした土台によって、妨害など彼には関係のないことだという強い意志が生まれたのでしょう。

●チームメートとの障壁が取り除かれた瞬間

私の活躍の場は三回表に訪れた。塁上には二走者がいた。打った時の感じはよかった。その手ごたえから、これは素晴らしい一打だということがわかった。打球は340フィート飛んで左翼フェンスを越えた。それは私にとってオーガナイズド・ベースボールでの第一号の本塁打だった。(略)
またこの日は、これまでチームメートとの間にあった障壁がとり払われた日でもあった。北部人も南部人も、はっきり態度に表わして私が立派にやり抜いたことを高く評価してくれたのだった。

「結果がすべて」という言葉がありますが、当然プロセスは重要であるものの、結果はそれ以上に周囲から期待されます。まさにロビンソンの活躍とそれがもたらしたチームメイト間の障壁崩壊については、それを体現していると言えます。ロビンソンがメジャーリーグへ昇格する際、当時の監督は、能力のある者を試合に出す、と公言したそうです。

前出のコヴィー博士は、求められている貢献を明確にし、その貢献を成すことが大切であると述べています。逆に、自身が成すべき貢献が不明確であれば力は弱まり、他人のせいにするだけ、とも述べています。

ほとんどどんな状況でも、スキルと能力を磨き、自分の影響の輪の中で仕事をすれば、あなたとあなたの仕事ぶりに対する周囲のパラダイムは変わるはずだ。 スティーブン・R・コヴィー

ロビンソンは自身に求められる貢献とは、活躍し、チームに勝利をもたらすことであり、ぶれることなくプレーを続けます。期待される成果を明確にし、それをもたらす。いつの時代においても他人とのかかわりがある人々にとって原則となることでしょう。

『黒人初の大リーガー ジャッキー・ロビンソン自伝』(ジャッキー・ロビンソン著、宮川 毅訳、ベースボール・マガジン社)

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