第21回 ヘンリー・D・ソローに学ぶ

「悪の葉っぱに斧を向ける人は1,000人いても、根っこに斧を向ける者は1人しかいない」という言葉は『7つの習慣 成功には原則があった!』でも中心となる概念の1つです。この言葉は、今回ご紹介するヘンリー・D・ソローによるものです。

彼は活動の中で超絶主義者と親しくなり、自らも自然に親しむような生活を試み、それらの中で当時のアメリカ社会、政府と権力などについて考察し著したのが『森の生活』です。本書で語られる生活をシンプルにするという発想は、コヴィー博士が「7つの習慣」を作成する際にも少なからず影響を受けたのではないでしょうか。

■人生を高める努力をしようと自覚する

われわれがふたたび目覚め、しかも目覚め続けるのは、機会の助けを借りるのではなく、曙の光をたえず待ち望む心によるのだ。曙の光はわれわれの熟睡を妨げることはない。私が誠に心強く感じているのは、人間は確かな能力をもっていて、自分の人生を高める努力をしようと自覚していることだ。独特の絵を描いたり、彫刻を制作し、その結果、いくつかの美しい作品を完成することは結構なことである。しかし、それよりも遥かにすばらしいことは、社会の環境と生活条件そのものをしっかりと見据えて彫刻し、絵画を制作することだ。そうしたことは実際にできる。実りのある一日であると感じ取ることこそが最高の芸術である。

いろいろな解釈が考えられる深い文章です。1つには、「社会の環境と生活条件そのものをしっかりと見据えて彫刻し、絵画を制作すること」とは人生そのものであり、自分の人生を環境と条件に合わせてつくりあげるというのは、単に絵を描いたり彫刻するということよりもはるかに素晴らしいことなのだと説きます。

人生という彫刻を彫るには、「第一の創造」が必要になります。人生の目的を明確にし、その目的に従って、「実りのある1日であると感じ取ること」、つまり価値観や原則に従って行動することで内的な充足感を得ることができるということではないでしょうか。

また、「社会の環境と生活条件そのものをしっかりと見据えて」行うこととは、コヴィー博士が『第8の習慣』の中で説く、「あなたの良心・才能・情熱と、周囲のニーズが重なったところに、あなたの為すべき貢献がある」とも重なります。

■いろいろなくだらぬ快楽などは真実の影法師にすぎない

にせ物や偽りが最もまともな真理のごとく思われて、真実が曖昧なものとされている。もし、人々が厳しく真実だけを直視し、誤謬に陥ることのないようにすれば、人生とは、誰もが知っているものに譬えれば、お伽噺やアラビアン・ナイトのように見えるだろう。この世の必要欠く可からざる事と存在すべき権利だけを尊重すれば、音楽の調べや詩歌の歌声が街々に反響することだろう。急がず、賢明であれば、偉大で価値あるものだけが永遠に、かつ絶対的な存在であること、そして取るに足りない恐怖や、いろいろなくだらぬ快楽などは真実の影法師にすぎぬことに気づくのだ。このことに気づけば、心は常に爽快になり、崇高な気分となる。眼を閉じて眠ったり、外観に欺かれたりしていると、人はどんな所においても日常生活に慣らされ、固定観念を身につけてしまうものである。

本質以外は、「真実の影法師」にすぎず、それに気がつけば「心は常に爽快になり、崇高な気分となる」といっています。本質とは、コヴィー博士のいうところの社会における「原則」と解釈してもいいかもしれません。

コヴィー博士は「7つの習慣」として体系化するにあたり、現代において人気のある付け焼き刃のテクニックに代表される個性主義ではなく、個人の内面に潜む原則といえる人格主義を追求しました。

コヴィー博士が個性主義の代表例として挙げる「人間関係や自己PRのテクニック」や「積極的あるいは前向きな考え方」といったものは、まさにソローのいう「真実の影法師」という側面もあるでしょう。

ソローは「このことに気づけば、心は常に爽快になり、崇高な気分となる」と語っています。周囲からの表面的な情報に振り回されることなく、自分自身の心の奥底にある価値観に沿った生活を送ることが、本来の充足感につながるのではないでしょうか。

(参考:『森の生活』、ヘンリー・D・ソロー、佐渡谷重信訳、講談社学術文庫)

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