電話の発明や聾者教育に尽力した人物として有名なアレクサンダー・グラハム・ベル(1847-1922)は、以前このコーナーで紹介したコナン・ドイル同様、スコットランドはエディンバラ出身です。深い親交を持つヘレン・ケラーはベルを非常に尊敬していたといいます。そんな彼の信条をいくつか紹介しましょう。
●金銭を人生の中心に据えない
あるとき、ベルはケラーにこう打ち明けた。「わたしがしてきたことで価値があるのは電話だけだと思う人もいるだろう。電話はもうかる発明だからだ。残念ながら、金を成功の尺度にする人が多いのだよ」。死を迎える六年前の一九一六年、電話の発明者はいま一度、その発明はたしかに誇らしいが、自分が果たしたほかの貢献をそれ以上に誇らしく思っていると明言した。「わたしにとっては昔から、聴覚障害者教育にかかわる仕事や関心を認められるのは電話の仕事を認められる以上に光栄なことなのだ」と。
この引用部からも、金銭を人生の中心に据えない生き方がうかがわれます。『7つの習慣 成功には原則があった!』は、「原則中心に生きる」ことの大切さを提言しており、経済的な安定や金銭はその結果に過ぎません。ここでベルがいう「聴覚障害者教育にかかわる仕事や関心を認められる」仕事とは、原則以外の何物でもありません。
●創造力の重要性
ベルが最初の発明を思いついたのは学校時代のことだった。クラスメートのひとりの父親が大きな製粉所を所有していた。ある日、その友だちとふたりで製粉所を走りまわって騒いでいると、その父親から事務所に来なさいと言われた。友人の父親は、人のじゃまをするのではなく役に立つことをするようけしかけ、小麦の殻をむく方法を考えたらどうかと提案した。(略)製粉所をうろうろしていたときに使われていない機械を見かけたことを思い出した。あの機械のなかにはブラシつきの回転へらがあるから、それを使って殻をむけばいいんじゃないだろうか? 試しにやってみた少年達は、まもなく製粉所のオーナーにきれいにむかれた小麦を鼻高々に見せた。
時として、子どもたちの創造力には驚かされるものです。ここで紹介したベルのエピソードも、まさにそのような事例といえるでしょう。
コヴィー博士も著書「子どもたちに『7つの習慣』を リーダーシップ教育が生み出した奇跡」において、子どもたちの驚くべき想像力について言及するとともに、創造力や右脳を重視することの有用性を説いています。
我々はもはや子どもではありませんが、知性、情緒、精神、肉体の4つの側面をバランスよく磨くことで、常に創造力を発揮する状態にしておきたいものです。
また、我々のビジネスにおいては、創造力は、チームメンバーとともに発揮されます。そのためには、周囲の人たちの「違い」を理解し、尊重し、あなたの案でもなく、相手の案でもない「第3の案」を創造すべく、常に意識し、こころがけておく必要があります。
(参考: 『グラハム・ベル 声をつなぐ世界を結ぶ』、ナオミ・パサコフ著、近藤隆文訳、大月書店)