アルトゥール・ショーペンハウエル(1788-1860)は、ドイツの哲学者です。商人の父と議員の母を持ち、父に半ば強制的に、商人の道を進まされました。しかしショーペンハウエルが17歳のとき、父が他界。彼は元より興味のあった哲学者の道を進み始めます。
今回紹介する書籍は、彼の著作『パレルガ・ウント・パラリーポメリ(余録と補遺)』の中から、読書に関するエッセイを抜き出して編纂したものです。現代はオンライン書店や電子書籍の台頭で、読書がより一層身近になりました。しかし濫読は禁物だとショーペンハウエルは指摘します。
約200年前の指摘にもかかわらず、現代の読書にも大いに通用するものであり、読書について再度考えさせられます。
■受け売りの罠
いくら量が多くてもそれが自分の頭で考えず
鵜呑みにした知識であるなら、
はるかに量は少なくても
充分に考え抜いた末に手にした知識の方が価値がある。
知識を得たことで満足せず、自分の中で深く洞察し、自分の意見として昇華させてこそ意味があるということでしょう。
「鵜呑み」は、ビジネスにおいても大変危険なことです。「思い込み」や「決めつけ」と同じで、相手の立場やニーズを深く理解することなくビジネスの提案をしたところで、うまくいくことは少ないでしょう。
「量は少なく」とも「自分の頭で考え抜くこと」、肝に銘じておきましょう。
また、彼は次のようにも述べています。
自分の時間を読書ばかりに費やし、
本から知恵を得ている人は、
たくさんの旅行案内を読破し、
その土地についてくわしい知識を手にした物知りに似ている。
今の時代でいえば、「インターネット」上の情報だけで、企画やビジネスを考えることも含まれるでしょうか。
ビジネスにおいても、現地、現場を見て初めてわかることがたくさん存在します。また、本当のニーズや価値観などは本物に触れてわかることも多いでしょう。頭の中の知識だけではなく、体感、体験をあわせて得ることで結果はおのずと違ってくるはずです。
■きちんと吸収してこそ、読書
本を買うのはいいことだ。
ただしそれを読む時間も一緒に買えればの話である。
私たちは本を買うと、その内容まで
自分のものにしたような錯覚におちいる。
かつてよくいわれた「積読(つんどく)」というものでしょうか。買うだけでその中に書いてあることを理解したつもりになることはよくあることです。しかし、実際に読んで自分のものにすることと、単に本を所有するのは全く別のことです。
また、「目次だけ読んだ」「前書きだけ読んだ」「パラパラとめくった」なども似たような話かもしれません。
さらに、ビジネスの重要な場面にもかかわらず、「本を読むこと」に没頭しすぎて、チャンスを逃してしまうことがあっては本末転倒です。「7つの習慣」で言うように、重要なことは「P/PC」(結果と結果を生み出す能力開発)のバランスなのです。
本を買うときは、「その本を読む時間も合わせて買うこと」。よく覚えておきましょう。
(出典:『読書について』、ショーペンハウエル著、赤坂桃子訳、PHP研究所)