古典に学ぶタイムマネジメント|113回 リチャード・ファインマン

量子力学における多大なる功績が評価され1965年にノーベル物理学賞を受賞したリチャード・ファインマン(1918-1988)は、その功績もさることながら、聴講者に好奇心を掻きたたせるスタイルの授業を提供することでも名を馳せ、さまざまな興味深いエピソードが書籍に数多くまとめられ、ほとんどが和訳されているほどの人気を博しました。彼がどのような原則を実践したかを追っていきましょう。

●本質に取り組む

あの鳥の名前を知ろうとすれば、これだけいろいろあるわけだが、いくら名前を並べてみたってあの鳥についてはまだ何ひとつわかったわけじゃない。ただいろいろ違った国の人間が、それぞれあの鳥をどう呼んでいるかわかっただけの話だ。さあ、それよりあの鳥が何をやっているのか、よく見るとしようか。大事なのはそこのところだからね。

上記はファインマンの息子が父親とのエピソードを回想するシーンから引用しています。ファインマンは散歩中に鳥を見つけてはさまざまな言語での呼び方を伝えた後、上記のように名前だけを覚えても意味がないと伝えたそうです。

これはいうまでもなく、現代のビジネスにも通用します。横文字や専門用語を多用し、話を複雑に見せかけ、それらしいソリューションを提案するも、実行すると穴だらけという事例は枚挙に暇がありません。ファインマンの言う「あの鳥が何をやっているか」が本質なのです。

では自分自身における本質とはどのようなものでしょう。我々は何に取り組むべきなのでしょうか。「7つの習慣」を提唱した故スティーブン・R・コヴィー博士は著書『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』において、「変わらない中心を持つ」ことの大切さを説きました。

自分の中に変わらない中心があってこそ、人は変化に耐えられる。変化に対応する能力を高める鍵は、自分は誰なのか、何を目指しているのか、何を大切にしているのかを明確に意識することである。

自身の行動が本質を捉えたものであるか否か。常に意識することでアウトプットの質はもちろんのこと、周囲からの評価、周囲への影響力も大きく変わることでしょう。

●開き直る

大学がいったん教授を雇ったら、その教授が何をするかは大学の責任、大学のリスクだ。だからもし教授がなにひとつ成果をあげなくても、彼自身が心配する義務はない。だから自分の好きなことをやっていればそれでいいんだ、と言うじゃないか!(略)
こうして昔のようにのんびりと遊び続けていると、まるで瓶の栓でもぬいたようにすべてがすらすらと流れ出し始めた。そして間もなく後のノーベル賞受賞の基礎になった仕事をやりあげたわけだよ。

圧倒的なパフォーマンスを見せ続けたファインマンですら、スランプに陥った時期があったそうです。思ったような成果が出ない時期、どういうわけかコーネル原子力研究所の所長、ボブ・ウィルソンから上記のようなアドバイスを受けます。彼は無事スランプを脱出、最終的にはノーベル物理学賞まで行き着きます。

このウィルソンのアドバイスですが、研究員に限らず、現代のビジネス・パーソンにも当てはまるものかもしれません。もちろん年度初に目標設定があることと思います。もちろんその割り当て達成に気をもむこともあるでしょう。しかし考えすぎても泥沼にはまってしまうことも考えられるわけで、彼が実践した開き直りが気分転換をもたらす可能性は大いにありえることでしょう。

前述の故コヴィー博士は、いかなるときも「自分のすべきこと」にフォーカスすることを薦めています。著書『7つの習慣 最優先事項』(キングベアー出版)からの引用です。

私たちは、きつい仕事を絶え間なく続けることよりも、むしろ「自分がすべきだと思うこと」をしないことによって、心を乱したり、緊張したりして、はるかに疲れてしまうことが多い。

常に自分は何に取り組むべきか、どのように表現するべきか。これを自問し続けることは、より質の高いアウトプットの醸成と、そのさきにQOLの向上をもたらすかもしれません。

『ファインマンさんは超天才』(クリストファー・サイクス著、大貫昌子訳、岩波書店)

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