古典に学ぶタイム・マネジメント|69回 ファラデーに学ぶ

「ファラデーの法則」で知られるマイケル・ファラデー(1791-1867)は英国の化学者・物理学者です。物理学における電磁場の基礎理論を確立、現代につながるすべての電気技術の源泉ともいうべき大きな貢献を果たしました。また、ベンゼンの発見をはじめ、化学者としても数々の業績を残しています。その一方で、一般市民に対し「科学とは何か」を広く浸透させるための普及活動も行っていました。彼の講演には多くの聴衆が駆けつけ、会場に入りきらないほどだったといいますから、当時の英国において大変な人気と影響力を持った人物だったことが窺い知れます。

●積極的な生き方

しかし、ファラデーは飽き足らなかった。製本技術の習得自体はやりがいがあったが、急速に自覚するようになっていた欲求を満たしてはくれなかった。仕事場で日がな一日、本に囲まれながら、知識と、自然に関する真実との出会いとを求めるようになっていった。

多くの偉大な業績を残したファラデーですが、驚くべきことに、教育機関できちんと学んだ痕跡が見当たらないといわれています。では、いったいどのようにしてさまざまな知識を身につけ、物理や化学の世界に足を踏み入れていったのでしょうか。

上の引用にもあるように、勤め先の製本屋で製本技術を習得するにつれ、知の世界や自然界に対する好奇心が強まっていった彼は、休憩時間になると仕事場にある百科事典や専門書の類を読み漁っていたようです。

これほど主体的かつ積極的な生き方を自ら選択し、実践し続けることは、並大抵のことではありません。教育のバックグラウンドを十分に持たなかった彼にとって、ほぼ独学で物理や化学を学ぶことの困難さはいかほどだったでしょうか。

「7つの習慣」の提唱者である故スティーブン・R・コヴィー博士は、その著書『偉大なる選択 偉大な貢献は日常にある小さな選択から始まった』(キングベアー出版)において、次のように論じています。

「積極的な生き方をする選択は、簡単そうに見えるかもしれない。そもそも、受け身的な生き方のほうがいい人などいるだろうか。だが結局のところ、自分の行動だけが本当の答えなのだ。自分の人生は自分で決めたいと言いながら、いつ何をするか決定することなく、テレビの前で夜の時間を過ごしてしまう人が何と多いことか」

本気で自分の望む人生を生きようとする人にとって、日々の選択、一つひとつの選択は非常に重要な意味を持ちます。それを踏まえて自身の毎日の選択を振り返ってみてください。あなたに残された時間の少なさに思わず慄然とするのではないでしょうか。

●指導者ぶらず、謙虚に、粘り強く

ファラデーは、聴衆に重要な点を伝えるのに、ねばり強い論法を使い、聴衆が自分で結論を引きだすようにしむけた。たんに教師然とした教え方をするのを避け、こう考えるべきだと思っていることを聴衆に言わなかった。指導者ぶったやり方は、一時的に効果があるかもしれないが、講演者にとっても聴衆にとってもためにならない。

これはファラデーが一般市民に向けて科学の導入講座を開講した際の描写です。彼の謙虚さに注目してみましょう。

皆さんは、講演や書籍の語り手に謙虚さを感じたとき、内容がすんなり頭に入ってくるような気がした経験はありませんか? 逆に、話の内容がいかに立派でも、口調や文体が複雑だったり威圧的だったりすると、何となく不快な気分になって脳が拒絶的になっているのを感じたことはないでしょうか。

ファラデーは決して自身の主義主張を押しつけることなく、あくまでも聴衆に考えさせ、結論を出させるスタイルを守りました。そうしなければ、どんなにいい話をしたところで、聴衆の役には立たないことをよく理解していたのです。

前述のコヴィー博士は、著書『第3の案 成功者の選択』(キングベアー出版)において、謙虚さの対極にある傲慢さについて、次のように批判しています。

「古代ギリシャ人は、目に余る思い上がり、傲慢こそ最大の罪としていた。(略)もしだれもあなたに意見しようとせず、あなたが他者の意見をほとんど受け入れようとせず、聴くよりも話すほうが多く、忙しさにかまけて反対意見の人たちに対応していないなら、あなたはこれから転落するしかない」

古代ギリシャの時代にはすでに周知されていたという傲慢の罪。そして、19世紀の偉人であるファラデーが発揮していた謙虚で誠実なリーダーシップ。21世紀に生きる私たちが今こそ学ぶべき点が大いにありそうです。

(参考:『マイケル・ファラデー 科学をすべての人に』、コリン・A. ラッセル著、須田康子訳、大月書店)

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