第30回 ジャン=アンリ・ファーブルに学ぶ

ジャン・アンリ・ファーブル(1823-1915)といえば、『昆虫記』をはじめとした優れた業績で世界中に知られる博物学者です。幼い頃からさまざまなものに対して興味を抱き、導かれるまま、研究に研究を重ねました。その結果、数学・物理学・博物学の学位を独学で取得し、数多くの書籍を出版するなど、多彩な才能を開花させました。その生き方からいくつかのエッセンスを紹介します。

●チャンスに常に備える

チャンスが現われたら迷うことなく、その場で掴まえなければならない。というのは、おそらく長いことかかっても、もう二度と再び現われないかもしれないからだ。そしてチャンスというものは、ふつう、そのことを夢にも考えていないときに現われるので、それをうまく利用する用意はまったくできていないものである。(略)とっさにうまい考えがひらめいて、与えられたチャンスを利用することができるようなら、運がよすぎるぐらいである。

しかしまた、このチャンスは、一所懸命求めている者にしか訪れない。太陽のぎらぎら照りつける砂地の坂道とか、両側を高い崖にはさまれた蒸し風呂のような小道とか、または、いつ崩れ落ちないともかぎらない、 ( ひさし ) のように突きだした砂岩の上などで、何日も何日も辛抱に辛抱を重ねて待たなければならないのである。

ファーブルの指摘に、賛同する方も多いでしょう。チャンスはいつ訪れるかわからず、そしてそれは、求めている者の前にしか現れません。常に備えていなければ、チャンスが到来しても、気づくことができない場合もあるはずです。

彼の功績として有名な『昆虫記』や植物標本は、この精神があったからこそ完成したものといえます。厳しい環境の中、わずかな時間すらも無駄にせずに、起こり得る状況を十分に想定し、備え、調査や実験を行ったが故の成果でしょう。

『7つの習慣 成功には原則があった!』では、第七の習慣として、日々「刃を研ぐ」ことを紹介しています。螺旋階段を上るように学習し、行動し、振り返り、また学習する、こうした活動を人の持つ4つの側面すべてにおいて磨かなければならないとしています。

そうした努力の中に、「チャンス」が生まれてくるのでしょう。

●まず、事実を確認する

さまざまな理論を闘わせること、それは勝手である。想像の世界というのは漠然としたもので、そこに各自がそれぞれの観念をもち込むのは自由である。 しかし確固たる事実には議論の余地がない。ある事実を嘘だと思いたいからと気がせくあまり、他によく調べもせずにその事実を否定するなど、見当違いも甚(はなは)だしいことである。(略) まず最初に、事実を見てもらいたい。それから議論をしてほしいものである。われわれには時間があるので、そういう人にも観察してもらうために、これまでの、あるいは今後予想される反対論に対して、ここで答えておこうと思う。ただし、子供っぽい中傷であることがまる見えの議論はもちろん黙殺する。

これはファーブルの研究スタンスそのもので、先人のどのような考えであれ、疑わしいと感じれば即座に調べ上げ、真否を確かめました。『進化論』で有名なダーウィンですら彼の標的となったといいます。

我々はさまざまなパラダイムを通して物事を考えます。恐ろしいことに、自分はその色眼鏡をかけていることに気づきません。事実にすら気がつかないこともあるでしょう。

「頭と率先力を使いなさい」とコヴィー博士は述べました。あらゆることを疑い、実験という行動を起こしたファーブルは、まさしく頭で考え、率先力を駆使した人物といえるでしょう。自分から何もしないでも誰かが解決してくれる、という、頭と率先力を使わない生き方を決して選択しないことが、激動の現代において最重要なのかもしれません。

(参考:『完訳 ファーブル昆虫記 第1巻 上』、ジャン=アンリ・ファーブル著、奥本大三郎訳、集英社
   『完訳 ファーブル昆虫記 第4巻 下』、ジャン=アンリ・ファーブル著、奥本大三郎訳、集英社
   『ファーブル昆虫記 6 伝記 虫の詩人の生涯』奥本大三郎著、集英社)

古典に学ぶタイムマネジメント

コヴィー博士の集中講義 原則中心タイム・マネジメント

グレート・キャリア 最高の仕事に出会い、 偉大な貢献をするために

「セルフ・リーダーシップ」で 時代を乗り切る!

ビジネス・パーソンのための ビジネス開発講座|『ヘルピング・クライアンツ・サクシード』に学ぶ、ソリューション開発の原則

ブレークスルー・トーク

アンケート結果に見る 「タイム・マネジメント」

スティーブン・R・コヴィー コラム