古典に学ぶタイム・マネジメント|72回 新島 襄に学ぶ

新島襄(1843−1890)は、明治時代を代表する宗教家、教育者であり、関西の名門私大、同志社大学の創立者として知られています。妻・八重を主人公にした大河ドラマを通して、彼の人となりに興味を持たれた人も少なくないかもしれません。

上州安中藩の下級武士の家に生まれ、漢学や蘭学を通じて欧米の文化や宗教にふれた新島は、当時の禁を破ってアメリカに密航し、現地の大学を卒業します。9年にも及ぶ欧米生活で、プロテスタントとして洗礼を受け、さまざまな学びと知己を得た新島は、帰国後、同志社大学設立をはじめ、近代日本の教育発展に大きな影響を与えました。

●教育こそが原動力

(編注:新島襄をさす)は高層ビルや時速五〇キロで走る蒸気車や視覚障害者のための学校を創出した欧米文明を発展させた原動力はデモクラシーとキリスト教とともに教育の力であることを見抜いたのである。

新島は正味九年間ニュー・イングランドを中心にヨーロッパで生活し、帰国後我が国の近代化に貢献するためには、欧米文明の中核ともいえるデモクラシーとキリスト教と教育を我が国に導入することを決心した。

1874(明治7)年、宣教師として帰国した新島は、キリスト教大学を日本に設立するため、奔走します。講演や聖書研究会を通して布教活動を行う傍ら、法規制などさまざまな障害と折り合いをつけ、京都に同志社英学校(現 同志社大学)を設立したのは1年後のことでした。

この時代、徹底して主体的に動く新島襄という人物が存在しなかったら、日本における近代教育制度の整備はもっと遅れていたか、あるいは今とは異なる形で定着していたかもしれません。

教育を受けることは国民の義務であり権利でもありますが、「学び」とは何かという問題に立ち戻れば、私たちの学びには期限も終わりもないはずです。

「7つの習慣」の提唱者である故スティーブン・R・コヴィー博士は、学校教育を終えると、私たちの知性は弱体化する傾向にあると指摘しています。言い換えれば、自主的に知的能力を開発しなくなるケースが多いということです。

では、知性の弱体化を回避するにはどのような行動をとればいいのでしょう。ビジネス・パーソンはビジネススクールに通うのが最善の方法ということになるのでしょうか。

コヴィー博士は、外側から規制された訓練が必要な場合もあるが、ほとんどの場合はそうではないと言い、以下のような見解を述べています。

「主体的な人であれば、自分自身を教育するために、自ら様々な方法を見出すことができるだろう」(『7つの習慣 成功には原則があった!』キングベアー出版)。

多くの情報があふれている現代において、自ら定期的に何かを学び続けるには、好奇心や目標など、主体的な動機が必要になるということかもしれません。

●生徒の主体性を尊重する

土曜日は健康増進のために授業がなく、日曜日は精神修養に重点がおかれ、毎日授業は午前中三時間しかなく、午後と夜は自修、英語のテキストを用い、英語でおこなわれていた。授業の進め方は学生が予習してきたことを教師が質問し、彼らに知識を注入するのではなく、彼らが主体的に考えることに重点がおかれていた。

上記は、同志社英学校創設当時の教育システムについて書かれたもので、「知識詰め込み型教育」の弊害が、すでに認識されていたことがわかります。また、英語のテキストを用い、英語で授業を行うなど、現代顔負けの先進的な授業が実施されており、寮生活においてもルールづくりから生徒が行うなど、自主性が重視されていたことが窺われます。

おそらく、個々の自覚や主体性を育むことに主眼が置かれていたのでしょう。その意味で、新島襄の教育論は、100年以上経った現代においても、そのまま通用しそうです。

興味深いのは、コヴィー博士もまた、以下のような言葉を残していることです。

「自覚を持ち、自分の頭の中のプログラムを客観的に見つめる能力を身につけることは、極めて大切なことである。私に言わせれば、これこそ”教育”そのものの定義なのである」(『7つの習慣 成功には原則があった!』キングベアー出版)

主体性とは、何かを学ぶ場合のみならず、ビジネス、家庭、地域社会など、我々がかかわるすべての領域、すべての行動において必要となるものです。

この激動の時代、主体性を欠く個人が豊かで充実した人生を送ることは不可能です。まずは自覚を持って、最初の一歩を主体的にスタートしてみてはいかがでしょうか。

(参考:『新島襄 近代日本の先覚者』、同志社編、晃洋書房)

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