古典に学ぶタイム・マネジメント  第14回 シモーヌ・ヴェイユに学ぶ

今回は、20世紀の前半に活躍した女性哲学者、シモーヌ・ヴェイユ(1909-1943)を紹介します。彼女はパリで生まれ育ち、少女時代に哲学者、アラン(エミール=オーギュスト・シャルティエのペンネーム)の直接の指導を受け、哲学に目覚めました。優秀な成績で学校を卒業後、教師としての生活を送るのですが、社会労働者の感覚を体感するため、教師の地位を捨て、女工としてキャリアを積みます。

その後、政治活動に転進。亡命して執筆活動を行い、多くの主張を後世に残しました。わずか34歳で生涯を終えた彼女にとって、「時間」とはどのようなものだったのでしょう。価値観(13徳)を手帳に記載し、さまざまな成功を手に入れたベンジャミン・フランクリンと多くの共通点が見られました。

■誘惑の一覧表(毎朝読むこと)

怠惰の誘惑(ずば抜けて強い)

時間の流れのまえで怖気づくな。しようと決意したことを延期するな。

内的生活の誘惑

現実に遭遇する困難以外にはかかわるな。感情にかんしては、現実の交流に対応するもの以外は、あるいは、霊感を与える契機として思考に吸収されるもの以外は、自分自身にゆるすな。感情のなかで想像によるいっさいを切りすてよ。

献身の誘惑

主体/主観にかかわるいっさいを、外的な事物や人びとに従属させよ。しかし、主体そのもの―すなわち判断―は従属させるな。他者には、おまえが同じ立場なら要求するだろう以上のことを、約束したり与えたりしてはならない。

支配の誘惑

頽廃の誘惑

悪を増大させるような反応をもって悪に対処するな。

彼女はこのリストに対して、「まったく克服できずにいる唯一の誘惑は怠惰である」と述べています。そしてそのことを嘆き、「この誘惑を克服できぬ以上、自分はただひとつの野心すら達成できず、夢のなかで生きることになるだろうと」と言及しています。

彼女にそこまでいわしめた「怠惰の誘惑」とは、まさしく「緊急ではないが重要な」第 II 領域のことがらに取り組めるか否か、ということではないでしょうか。

緊急性を帯びていないために、私たちはどうしても緊急性の高いことに先に取り組み、重要でありながら緊急ではないことは先送りをしてしまいます。

シモーヌ・ヴェイユも、時間の流れに対し、怖気づくことなく、決めたことに対しきちんと行えと語っています。

一方、ベンジャミン・フランクリンも毎朝価値観のリストを見直し、就寝前に達成度を確認したそうです。価値観は全部で13個設定し、毎週1つずつフォーカスしました。つまり1年間で同じ価値観が4巡する計算になります。かれはこれを長年続けたそうです。

■時間への恐怖

時間は人間にとってもっとも深刻かつ悲劇的な気がかりである。唯一の悲劇的な気がかりといってもよい。想像しうる悲劇のすべては、時間の経過という感覚をもたらす源泉である。

厳密にいえば、時間は存在しない(限定としての現在はともかく)。にもかかわらず、私たちはこの時間に隷属する。これが人間の条件である。

「時間は存在しない。にもかかわらず、私たちはこの時間に隷属する」のが人間の条件とはどういうことなのでしょうか。「しかも、悲劇的なほど気がかりな存在である」とは、何を指しているのでしょうか。

彼女がいいたかったのは、すべての人は、時間という捉えどころのないものに縛られ、支配されているということでしょう。そして、悲劇によって、時間の存在を知らされるということです。

ヴェイユは気晴らしを、「時間の経過を忘れさせることを目指すために行うもの」と定義しています。

パーソナル・コンピューターという概念を提唱したアラン・ケイの言葉に、「未来を予想する最高の方法は、未来をつくり出すことである」とあります。隷属するだけではなく、時間を自らの手でコントロールしたいものです。

(参考:『ヴェイユの言葉』、シモーヌ・ヴェイユ著、冨原眞弓編訳、みすず書房)

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