古典に学ぶタイム・マネジメント 第41回 サム・ウォルトンに学ぶ

世界最大のスーパーマーケットチェーンにして、世界最大の売上額を持つ企業といえば、米国アーカンソー州に本拠地を置くウォルマートです。日本の流通市場にも、大手スーパーマーケットの西友を子会社化する形ですでに進出を果たしています。

今回紹介するサム・ウォルトン(1918-1992)は、ウォルマート社の創業者であり、一代にして同社を世界トップに育て上げた人物です。彼が大切にしている原則とは、どんなものでしょうか。

●「どんどんやってみなさい」

競争心のすごく強い人間で、ブリッジでも何でも必死になって闘ってくる。どんな結果が出てくるか見たかったんですよ。いすれにせよ、サムは全部わかっていて「どんどんやってみなさい」と言ってくれました。あの人はいつもそんなふうにいろいろなことに挑戦していましたから。提案に対していつも懐の深かったことがサムが成功した理由の1つだね。今でもそうさ。

これは、ウォルマート社の部下による「ウォルトン評」です。現在のような変化の激しい時代においては、成功のビジネスモデルはくるくると変わり、1つの成功にしがみついていると、あっという間に生き残りレースから脱落してしまいます。

次々と新しい事業にチャレンジし、手を変え品を変え、多種多様な顧客の奥深いニーズを自ら発掘していくようなスタンスが求められているといえるでしょう。

しかしながら、新しいことに挑戦するのは、とても勇気のいることです。時間管理の第一人者として知られるハイラム・スミスは、著書『TQ 心の安らぎを発見する時間管理の探究』の中で、「安心領域」という概念について、このように説明しています。

人びとは自身の活動範囲として「安心領域」を無意識のうちに作成するものであり、その領域から外部に足を踏み出すことに大きなストレスを感じる、と。

上記の部下によるウォルトン評を見ると、おそらくウォルトンは、部下が自発的にチャレンジする心持ちになった際には、その意思を最大限に尊重し、彼らが「安心領域」を抜け出すための大きな後押しとなってくれる、そういったリーダーだったのではないでしょうか。

●情熱からビジネスが始まる

しかし、私の人生をほかとは何かしら違うものにしてくれた要素を1つだけ選ぶとしたら、それは競争への情熱であると思う。その情熱こそが私を前進させ続けたカであった。次にどの店舗を視察するか、どこに店舗を開くか、どの商品を売り込んでいくか。私をそういったことに駆り立て続けたのは、まぎれもない情熱だったのである。

何をするにしても、情熱が最も大切な要素の1つであることは疑いようがありません。コヴィー博士は自身の著書『第8の習慣 「効果」から「偉大」へ』において、自らを突き動かす「ボイス」は、4つのニーズ(肉体、知性、情緒、精神)を表現した「ビジョン」「自制心」「情熱」「良心」から生まれてくるものだと説明しています。

どれだけ豊かな才能を持ち、適切にマネジメントできる能力があったとしても、情熱がなければ、その才能や能力がフルに発揮されることはありません。

ビジネスはもちろん、ビジネス以外の活動においても、情熱の有無と量が、生み出すパフォーマンスの質を左右することは、間違いのないところでしょう。

どんなに小さな仕事、他の人にとっては優先順位の低い作業であったとしても、どれだけの情熱を傾けることができるかどうかによって、ブレークスルーに至る機会は、全く異なってくるはずです。

PCやスマートフォンといったITツールがますます高性能化し、さまざまな仕事が効率化される現状にあっても、人の情熱が及ぼす影響力、その絶大なパワーは決して変わることがないでしょう。

(参考:『ロープライスエブリデイ』、サム・ウォルトン/ジョン・ヒューイ共著、竹内 宏訳、同文書院インターナショナル)

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