古典に学ぶタイム・マネジメント 第39回 チャーチルに学ぶ

今回取り上げるのは、イギリスの歴代首相の中でも最も知られているといっても過言ではないウィンストン・チャーチル(1874-1965)です。長きにわたり首相を務め、2002年に英BBC放送が行った「偉大な英国人」の投票においては1位に輝きました。時代を超えて今なお国民の心をつかみ続けるチャーチルの魅力とは、どのようなものだったのでしょうか。

●大急ぎの若者

彼は非常に功を焦っており、「大急ぎの若者」とあだ名されていた。それだけに勉強もめざましかった。たとえば知人の別荘に招かれたおりにも、汽車のなかでも、彼は書物、書類、筆記用具類を入れた箱を持ちこみ、寸暇を借しんで仕事をした。

成果を出すために寸暇を惜しみ努力することはさまざまな偉人に共通して見られる傾向、いわば成功への原則の1つでしょう。チャーチルも例外ではなかったのです。国民や周囲を鼓舞し続けた演説や著作物からしのばれる筆力も、生まれついての才能ではなく、努力と訓練による賜物だということです。

では、何が彼を「大急ぎの若者」と呼ばれるほどに突き動かしたのでしょう。これも偉人に共通して見られることですが、「なんとしても成功し、国を正しい方向に動かさなければならないという内なる声」、つまりボイスが彼には若くして聞こえていたのでしょう。

コヴィー博士は、著書『第8の習慣 「効果」から「偉大」へ』において、成功した人物は必ず4つのニーズ(肉体、知性、情緒、精神)を具体的に表現した「ビジョン」「自制心」「情緒」「良心」を確立し、自らのボイスに耳を傾けたことを指摘しています。

そしてそのボイスが、チャーチルの「独自の貢献」として、実を結んでいったのです。

●負の連鎖を断ち切る

実際チャーチル夫妻のお互いへの献身は生涯揺らぐことなく、二人の絆は古今の政治家カップルの中でも最も強いものの一つであるように思える。特に、クレメンティーンは人生のすべてを夫のキャリアのために捧げたと言っても過言ではなく、内気で、人見知りする性格にも拘らず、チャーチルを守るためであれば相手か誰であれ闘うことを躊躇しなかった。(略) 皮肉なのは、チャーチルも、クレメンティーンもとても模範的とは言えない夫婦から生まれてきたことである。

仲睦まじかったことで知られているチャーチル夫妻ですが、どちらの両親も「模範的とは言えない夫婦」という表現が興味深いところです。

コヴィー博士は『7つの習慣 成功には原則があった!』において、遺伝子や育った環境に現在の境遇の責任を押し付ける人が多いことを指摘しています。つまり、多くの人が今の自分の姿を、祖先や両親の育て方、あるいは環境、他人のせいにしたがる傾向を持っているということです。

しかし、自らの行動を選択しているのは自分自身であり、自らの行動の責任を取ることができるのは自分だけです。1つひとつの言動はその時点におけるその人ののパラダイムや人格のレベルを投影しているだけであり、本当の姿や可能性を映し出したものではありません。

チャーチル夫妻は自らの人生の責任を引き受け、両親から渡された脚本には従わず、彼ら自身の脚本を書き、それに従いました。これはまさに刺激に即反応するのではなく、どのように反応するかを自ら選択するという、「流れを変える」主体性のモデルに他なりません。

(参考:『チャーチル』、ロバート・ペイン著 ; 佐藤亮一訳、法政大学出版局)

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