古典に学ぶタイム・マネジメント  第16回 新渡戸稲造に学ぶ

新渡戸稲造(1862 - 1933)と聞いて皆さんが連想するのは何でしょう。世界に衝撃を与えた著書『武士道』を連想する人もいるでしょうし、国際連盟で事務局次長の地位に就き人種差別の撤廃に尽力したことを思い浮かべる人もいるでしょう。5,000円札の肖像画としても有名です。

彼は、アメリカ人女性と結婚するくらい英語が堪能でした。自ら英語で著した『武士道』は、内容はもちろん、その英文のわかりやすさでも海外で大きな評価を受けており、他にも数多くの名著を残しています。今回は366の言葉から成る彼の著書『一日一言』から、成果を出すための努力についての記述をご紹介します。

■自己啓発について

(7/1 思い立ったが吉日)

今年もはや半ばを過ぎて、失敗したことが多かったことを反省するが、あとの半年は、これを取り返さなければならない。すぐにその方針に向かって進むことである。貯蓄が必要だと思ったなら、すぐにその日のうちに一銭の貯金をしなさい。また、学問が大事だと思ったら、その日のうちに本を1ページでいいから読みなさい。

(7/26 今のたった今)

理想は何も遠い先にあるのではない。いつも身のまわりにあるもので、大きな仕事も今日の今から始まるもので、大きな考えもこの今の時に生まれようとしている。物事を実行しようとするときは、明日からと思ってはならない。

なるほど、彼がさまざまな成果を出し続けたのは、この精神にあったのかもしれません。いろいろなセミナーや書籍から、自分自身の課題を見出すことは頻繁にあると思いますが、その日のうちに取りかかるというのはとても難しいことです。「長い人生で見ればたったの1日だし・・・」とついつい自分自身に言い訳し、後回しにしてしまうのです。

「いつかそのうち・・・」や「時間がとれたら・・・」では、目標を実現することは難しいでしょう。

人生は有限です。無駄にできる時間などありません。強く決心したならば、今すぐトライしましょう。では、その努力を継続することについての記述をご紹介しましょう。

■努力について(諦めないこと)

(8/7 最後の最後まで)

同じ人間を教養のないただの人にするか、武勇に優れ、力の強い人にするか、人格者にするかは、だれもが経験する落胆や失望したときの決心にある。最後の最後にきて、もうだめだと倒れる者はそれきりで終わるが、もう一度立ち上がれば、後はしめたもので、自分の思いがかなうものである。

(8/15 意思があれば道はある)

西暦1769年の今日、ナポレオンが生まれた。彼に学ぶことは、意志の強さである。意志さえあれば、必ず進む道はある。固い決心さえあれば、山も崩れるし、河の水も干上がる。荊棘(けいきょく)の多いそこにも、つくろうと思えば路はできる。暗闇の中でも、心を鎮めて、念入りに見れば一筋の光を見出すであろう。

何があってもあきらめることなく、強い意志を持って取り組めと説いています。「最後の最後にきて、もうだめだと倒れる者はそれきりで終わる」ことに対しては、「頑張ったのだから・・・」と肯定してしまいそうですが、それでも立ち上がらなければならないと説きます。

■努力について(気長にやること)

(8/29 気長にやる)

わずかばかりの時間ででき上がったものは、瞬くうちに消えてなくなるもので、出世することも、気長に心のよりどころをしっかりと持っていれば、長続きするものである。長い年月の間に、自ら努力を積み重ね、一度の失敗にも落胆することもなく、また一度ぐらい成功してもおごることもなく、悠々として流れる大河のように大きな気持ちを持たなければならない。

短期的な努力が生む成果は一時的なものであり、すぐに失われてしまうものです。学生時代のテスト勉強や、お客様への一夜漬けでの提案書づくりなど、多くの方が経験されていることでもあるでしょう。

『7つの習慣』の著者スティーブン・R・コヴィー博士は、農場においては、一夜漬けは通用しない。秋に収穫を得たかったら、春に種を蒔き、耕し、水をやり、肥料をやり、ケアを重ねる必要がある。これは一般社会においても当てはまる原則である、と説きます。そしてこれを「農場の法則」と呼んでいます。

気長に、というとのんびりしたイメージを持たれるかもしれませんが、継続的に、長期的に行うということです。「今すぐ」「諦めず」「継続的に」。これらはものごとを成し遂げるための原則と呼ぶことができるかもしれません。

(参考:『【新訳】一日一言』、新渡戸稲造著、岬龍一郎訳、PHP研究所)

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