第32回 ノーベルに学ぶ

ノーベル賞によって現代人にもその名は馴染み深いアルフレッド・ベルンハルド・ノーベル(1833-1896)は、ダイナマイトの発明とその普及で巨額の富を得た化学者として知られています。社会への貢献目的で生み出したダイナマイトは兵器として利用されてしまいましたが、平和への願いを遺言に託し、ノーベル賞と、それを運営するノーベル財団の設立へと至りました。自身で工場を運営し、成功を収めるなど、実業家としての業績も華々しいものです。

●「内なる声」を見極める

アルフレッド・ノーベルの処世訓は《勤勉》であり、いまや彼はちょっと信じられないほどの猛活動を開始した。疲れも知らずに旅行して回り、自分から石切り場や鉱山で爆発を実演してみせた。当時としては異例に属したが、詳しい使用法を郵送するという方法で、彼の会社は製品の宣伝をしたのである。ときには、使用者の不注意から恐ろしい事故が生じたこともあったにしろ、大鉱山や国営のトンネル工事では時間と労働力を大幅に節約して成功を収め、ニトログリセリンと革命的な雷管への関心は大いに高められ、いまや鉱山業者仲間や技術雑誌では、尊敬をこめて話題にのぼりはじめた。そのおかげで注文は、外国を含めてほうぼうから来るようになった。

ダイナマイトという、当時のパラダイムを打ち破るような産物をいかにして理解してもらい、浸透させたのか。現代でこそ爆発までの原理が解明されていますが、当時としては全くもって奇妙な物体だったに違いありません。一見ただの塊が、凄まじい破壊力を持っているのですから。

しかしノーベルにはわかっていたのです。ダイナマイトを使うことで人々の生活がいかによくなるかが。彼は情熱を傾け、必死に営業活動を行いました。郵送という当時としては斬新なツールも活用し、成功を収めたというわけです。

スティーブン・R・コヴィー博士は自身の著作『第8の習慣 効果から偉大へ』において、我々の「内なる声」は、ビジョン、自制心、情熱そして良心が重なったところに存在すると述べました。ノーベルにとってダイナマイトには、それらすべてがあったのでしょう。

我々はノーベルになることはできません。しかし彼のように、「内なる声」に耳を傾け、それに従い、言葉では表せないくらいの満足を生活に見出すことは可能です。モノがあふれ、嗜好が多様化する中で、1人ひとりが「内なる声」を発見し、それに従うことが、ますます求められることでしょう。

●従業員満足度という先見の明

ノーベルがどんな協力者に対しても、相手の地位の高低に関係なく、連帯責任を感じていた実例はいくつも残っている。収益をあげない部門を閉鎖しようと計画し、その結果、工員の解雇者が出るとなると、彼はこう書いたものであった。「……このような場合、われわれはまずこの種の苦痛を免れられる可能性を捜さなくてはならない」

ある工場が創立一周年記念の祝賀パンフレットにノーベルの写真を求めたところ、こんな返事がきた。「私の協力者たち、それに工員すべての写真を載せるなら、こちらもむさくるしい独身男の写真を一枚そえましょう。そうでなければだめです」

現代でも浸透しきっているとはいえない従業員満足度という高度な概念がノーベルが先見の明を有していたことは明らかです。退職者向けの年金制度も整備するなど、彼の取り組みは現代でも十分に通用するものでした。

ノーベルは、人をモノとして扱い、経営vs従業員という図式が一般的だった産業時代にあって、お互いが満足することにフォーカスし、力を合わせることによって高業績を生み出しました。化学者としてだけではなく、経営者としての責任・自覚という面においても、私たちが彼から学ぶべきことは多いようです。

ノーベルは、『7つの習慣』が発刊される約100年前に亡くなっていますが、7つの習慣の「成長の連続体」のスタイルを体現していました。自信のスタイルを貫くことで、とてつもなく大きな成果を生み出した人物だといえるでしょう。

(参考:『ノーベル伝』、エリック・ベルイェングレン著、松谷健二訳、白水社)

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