第34回 ベーコンに学ぶ

17世紀に活躍したイギリスの哲学者フランシス・ベーコン(1561-1626)を今回は取り上げます。彼の残した言葉に「知識は力なり」があります。この言葉が示すようにベーコンは教育の重要性について多くを語り、学校をはじめとした教育システム構想の実現に力を尽くしたことでも知られています。その著書『学問の進歩』から、ベーコンの思想をひもといていくことにしましょう。

●用事の隙間にあるわずかな時間を学問に活用する

学問があまりにも多くの時とひまをくうという異議の申し立てについては、わたくしはこう答える。ずばぬけて思いきり活動的な忙しいひとにも、(きっと)仕事がそのうちにたてこんでくるのを待っているあいだの、手すきの時間はたくさんある。(かれがのろくさして仕事をてきぱきやれないとか、軽はずみに、がらにもない野心をいだいて、他人にやらせておくほうがよいようなことにおせっかいするとかいう場合は別である)。そうであるなら、問題は、ただその手すきのひまな時間をどうふさいですごすか、快楽のうちにすごすか、それとも研究のうちにすごすかというだけのことである。

現代に限らずいつの時代も「時間がない」「あと〇〇時間あれば…」「もう少し仕事が暇になれば…」と嘆く人が後を絶ちません。しかし、そういった人々ほど、実は無駄な時間を過ごしてしまっているということもあるのではないでしょうか。

ベーコンは「勉強するのには別な時間が必要だ」と主張する人に対して、用事の隙間にあるわずかな時間を勉強に活用してみては、と書いています。考えてみると、我々にはそういった隙間の時間が意外にたくさんあることに気づきます。たとえば通勤時間や移動時間、昼休みの残り時間など。他にもそれぞれの仕事特有の隙間が存在することでしょう。

「息抜き」や「休憩」あるいは「ストレス解消と呼ばれる娯楽」は確かに必要かもしれませんし、適度であれば問題ないでしょう。しかし、「学習する時間」が本当にないのか、しっかり振り返って考えてみる必要があるでしょう。

ベーコンの主張は時間管理の第一人者、ハイラム・スミスの考え方に、非常に近いと思われます。1日は24時間で構成されており、それは変えることができないものです。我々が管理できるのは行動であり、時間ではありません。ちょっとした空き時間に何をするのかを決定するのは、自分自身なのです。

●学問こそが刃の研ぎ石となる

学問のないものは、自分自身を吟味したり自分の責任を問うたりすることがどういうことであるかも知らず、また、「日々に自分がいっそうよくなってゆくのを感ずる、もっともゆかいな生活」の楽しみも知らない。学問のないものは、自分のもっている長所をぞんぶんに発揮し、たくみに用いることは覚えるが、長所を増すために大いに学ぼうとはしない。また、欠点をかくし、いつわるすべは覚えるが、それを改善するために大いに学ぼうとはしない。かれは、たえず刈りつづけてはいるが、けっして鎌を研ぐことをしない、へたな草刈人に似ている。

「7つの習慣」において第七の習慣は「刃を研ぐ」です。これは、のこぎりの刃を定期的に研ぐことの必要性を説く習慣ですが、ベーコンの、「かれは、たえず刈りつづけてはいるが、けっして鎌を研ぐことをしない、へたな草刈人」というたとえはまさに同じことを指しています。

我々は、人が本来持つ固有の4つの側面である「精神、知性、肉体、情緒」を適度に鍛え直すことで、日々のパフォーマンスを高レベルで維持することができます。

ベーコンは4つの側面のうち、知性にフォーカスしました。刃を研ぐ楽しみを「もっともゆかいな生活」と表現しています。「もっともゆかいな生活」とは、「日々に自分がいっそうよくなってゆくのを感ずる」ことです。つまり、自分自身の成長こそが、楽しみだと語っているのです。

目の前の仕事に追われている典型的な現代人こそ、学問の重要性を再認識する必要があるのかもしれません。

(参考:『学問の進歩』、ベーコン著、服部 英次郎・多田 英次訳、岩波文庫)

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