古典に学ぶタイム・マネジメント 第40回 野口英世に学ぶ

野口英世(1876-1928)といえば、黄熱病の研究などで世界をリードした細菌学者として知られています。しかし、野口が活躍した明治~大正時代、日本の英語教育は未熟で、欧米人の東洋人に対する差別意識も根強く残っていました。そんな中、野口が正当な評価を獲得するまでの道のりは苦労の連続だったようです。彼がどのようにして成功を切り拓いていったのか、その行動の一端を見てみましょう。

●常にチャンスをうかがう

そんな折、英世の名前を高める出来事があった。五月上旬のある日のことだった。英世は横浜埠頭に入港した「アメリカ丸」の検疫に当たっていた。

その時、船倉で苦しんでいる中国人がいた。英世はペスト患者と直感した。診察すると熱があり、鼠蹊部もはれていた。英世はただちに標本を作り培養を試みた。そこからペスト菌が検出された。

これは日本人として初の発見だった。

この知らせに皆が驚いた。伝染病研究所の仲間たちは、英世にやられたと兜をぬぎ、報告を受けた内務省も驚嘆した。北里博士も鼻高々だった。北里は英世に「スグコイ」と電報を打った。

この時期、野口は念願であった北里研究所への入所を果たすも、なかなかチャンスに恵まれず、周囲から見れば左遷ともとれる検疫の職に就いていました。細菌学者を目指していたはずが、気がつけば検疫官。思うところは多々あったに違いありません。

しかし、彼は常にアンテナを張り、チャンスを探し続けました。誰もが予想もし得ない場面で、そのチャンスをものにしたのです。

スティーブン・R・コヴィー博士は著書『7つの習慣 成功には原則があった!』において、「自分の身に何が起こるかではなく、それにどう反応するかが重要なのだ」と述べています。

自分自身の想像を超える状況に置かれたとき、それをチャンスと見るか、ピンチと見るかはその人次第です。主体的な人であれば、刺激の後に自ら反応を選択することができます。彼は落ち込んですねるのではく、チャンスを探すという行動を選択したというわけです。

主体的であることの意義を、改めて考えさせられるエピソードですね。

●長期的な視野を持つ

だがそれは世界の誰もがなし得ない未知の分野である。成功の確率は極めて低いと思わざるを得なかった。しかし、こうなったら成功させるしかない。英世の必死の実験が始まった。周囲がどんな難題を突き付けようが、英世はニコニコと笑顔でうなずき、二十四時間ぶっとおしで実験する日もあった。 英世が最初に与えられた仕事は、生きた蛇から蛇毒を採取することだった。噛まれて死んだ研究者もおり、命がけの危険な仕事だった。英世は見ただけで恐ろしいガラガラ蛇の首根っこを押さえて、口を開けさせて牙から吐き出させて毒液を採取した。 英世の身分は私設助手である。いつ解雇されるか、分からない不安が常に付きまとっていた英世はその不安を打ち消そうと、ものに憑かれたように蛇を押さえつけた。

彼はなぜこのような過酷な状況でも研究活動を続けることができたのでしょうか。1つの答えとして、彼にはこの研究室での経験の先に、果てしなく壮大なビジョンを描くことができていたからではないでしょうか。

リーダーシップ研究の第一人者であり続けたブレイン・リーは、著書『パワーの原則』(キングベアー出版)において、以下のような体験を紹介しながら、ビジョンの有用性を説いています。

リーは学生時代、農場でトラクターの運転をしてみることにしました。簡単だろうと思って挑戦したところ、いくら足元をしっかり見つめ、トラクターの前輪を地面の溝に合わせようとしても、トラクターをまっすぐに走らせることは全くできなかったそうです。

このとき彼は、農場主から指摘を受けました。大切なのは足元の前輪を見ることではなく、遠くの一点を見ることだ、と。

つまり、ビジョンを描き、目指す道のりをしっかり見定めさえすれば、多少足元が狂ったとしても、大きな方向性としては間違わずに、前に進むことができるというわけです。そして、このビジョンが明確であればあるほど、成功への道のりが多少困難であろうとも耐えられる、耐えて前進していくための動機づけとなり得ます。

野口が実践したことも、まさにそれでした。ビジョンを描き、情熱を持って取り組めば、どんな困難にも打ち勝ち、道を切り拓いていけるのです。

(参考:『野口英世 波乱の生涯』、星亮一著、三修社)

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