古典に学ぶタイム・マネジメント  第13回 カール・ヒルティに学ぶ

スイスの政治家であり学者、法務官、歴史家といった数多くの顔を持ったカール・ヒルティ(1833~1909)。オランダのハーグに本部を持つ国際司法裁判所の初代スイス代表として、その手腕を遺憾なく発揮しました。
今月はそんな彼の代表作『幸福論』をひもとくことにします。多くの役割を同時にこなした彼は、本書において時間のつくり方や仕事のつくり方について数多くの記述をしています。その中からいくつかを紹介しましょう。

■やる気を出すこと

あまり自分自身を大事がらないことである。いいかえれば、時間、場所、位置、気乗りや気分などの準備に長い暇をかけないことだ。
気乗りは、仕事をはじめれば自然にわいてくるもので、よく最初にありがちな一種の倦怠でさえ、それが本当にからだの原因から来ていないかぎり、仕事にたいして単に受身でなく、むしろ攻勢に出れば直ぐに消えるものである。

多くのビジネスパーソンは、大きな仕事、困難を伴う仕事であればあるほど自分に対してさまざまなお膳立てをします。やる気を出して集中できるように、多くの場合、入念に計画を立て、自分自身にプレッシャーを与え、環境を整え、時間を調整し、挑むことになります。あるいは、コーヒーを淹れたり、お菓子を準備したり。カバンから筆記用具やプランナー、携帯電話を取り出して並べる人もいるかもしれません。あなた自身もとりかかる前に行う作業がきっとあるでしょう。
しかし、カール・ヒルティは、「準備に長い暇をかけない」といいます。なぜなら、やる気や気乗りは「自然とわいてくるものだ」というわけです。
「自分を大事がらない」というのはなんともユニークな表現です。
この考えはコヴィー博士が『7つの習慣』でいう「目的を持って始める」の概念に通じるところがあります。未来を予測することの最も確実な方法は、自分でそのようになるべく行動を起こすことなのです。

■小さな時間の活用

多くの人は仕事にとりかかる前に、なにものにも妨げられない無限の時間の大平原を目の前に持ちたいと思うからこそ、彼らは時間を持たないのだ。(略)
実に、この小さい時間の断片の利用と、「今日はもう始めても無駄だ」という考えをすっかり取り除くこととが、ある人の生涯の業績の半ばを形づくる、と言ってもさしつかえないであろう。

この「今」という時間、どれだけ少ない時間であろうが、できることはあるし、「今日はもう時間がない」と考えることをやめなければならないといいます。
夕方遅く、いいアイデアが思い浮かんだときに、「今日はもう時間ないしなぁ、明日にするか」という考えを排除することが、業績をつくると語ります。
つまり、今あるこのわずかな時間をどのように使うか、この短い時間の積み重ねがあなたの人生を変えてしまうほどの影響を持つのです。

■規則正しく働くこと

時間をつくる最もよい方法は、一週に六日──五日でも七日でもなく── 一定の昼の(夜でない)時間に、ただ気まぐれでなく、規則正しく働くことである。──夜を昼とし、日曜日を働き日とすることは、決して時間と働く力とを得ることのできない最もまずい方法である。また、数週あるいは数ヶ月にわたる、いわゆる「骨休め」も、もしそれを文字どおりにとって、仕事をまったく止めるという意味ならば、むしろ考えものである。(略)
怠惰は、仕事よりもはるかに多く人を屈託させ、神経過敏にさせて、健康の真の基礎である抵抗力を弱めるものである。

時間をつくる最もよい方法として、「規則正しく働く」ことを挙げています。つまり規則正しく働くことが生産性を上げ、その結果、時間を生み出してくれるというわけです。
さらに、「規則正しく働く」ことは「肉体的、精神的健康をもたらす」と語っており、その有効性についても触れています。
思いついたとき、必要に迫られたときに働き、暇があると見ればずっと休む。こういうことをしていてはダメだと説く一方で、週に1回のリフレッシュは必要であり、働きすぎもまたよくないと、カール・ヒルティは説いています。
つまり、オンとオフのバランスを考え、規則正しい仕事と適度なリフレッシュを実践すること。その姿勢が私たちの時間管理に余裕をもたらすというのが、彼の主張といえるでしょう。
「7つの習慣」の第七の習慣は、人間の4つの側面をすべてバランスよく「研ぐ」ことを推奨しています。肉体、知性、精神、情緒、このすべての側面を磨くことで、私たちはバランスのとれた人間としてさらに成長することができるのです。

(参考:『幸福論(第一部)』、ヒルティ著、草間平作訳、岩波文庫)

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