第35回 北里柴三郎に学ぶ

北里柴三郎(1853-1931)といえば、破傷風やジフテリアをはじめとする細菌学での功績が有名です。学生時代に自らの使命に目覚め、医師としての道を歩み続け、当時最先端の医学を身につけるために若くして単身海外に渡るなど、医学的知識のみならず生き方の部分でも敬うべき点が多くあります。彼の伝記より紹介しましょう。

●迎合せずに、NOと言う

開会式では、各国代表者の祝辞がアルファベット順で行なわれた。イタリアの次はジャパンのはずだったが、事務当局は日本代表を指名せず、ロシア代表を指名した。すぐさま手を挙げ、大声で「座長!」と叫んだのは柴三郎である。座長席のそばにいた事務局の幹事が、あわてて柴三郎のそばに飛んできた。列席者が皆日本の席を注視する中で、柴三郎は「日本を省いたのはいったいどういう理由なのか」と詰問した。副会長その他の幹事らも駆けつけて「閉会まで待ってくれ」と頭を下げる、ロシア代表は壇上で立往生するという有様。(略)

「ほかのことなら手違いで済むかもしれないが、この問題は違う。このまま会議に参列するわけにはいかないからすぐ帰国する」

ここで紹介した出来事は1904年のことです。日露戦争中であったことを考えると、北里氏が「この問題は手違いでは済まされない」と言った理由も明確ですが、そういった国際的な問題はさておき、考えを行動に移す見事なまでの意志の強さと率先力に目を見張ります。

彼はまさに率先力の塊であったといえます。最先端の医学知識を得るためには、当時としては非常に珍しかった留学を果たしました。そういった自分の人生を自ら切り拓こうとする力、それは「7つの習慣」でいうところの『率先力』であり、これが非常に秀でていたことが分かります。

率先力の大切さをコヴィー博士は著書で次のように語っています。

「率先力を発揮する人としない人との間には、天と地ほどの開きがある。それは25%や50%の差ではなく、5,000%以上の効果性の差になる」

●知的向上心=「学びたい」という原則

柴三郎はどれほど些細なことにも熱心で、疑問を感じたらどんなことでも解答を出そうとした。レフレルは日ならずして「北里君は珍しい男です。われわれドイツ人にも彼ほどの勉強家は見当たらないくらいです」とコッホに報告した。以来コッホは柴三郎に特別注目するようになったという。

ここに登場しているコッホとは、ドイツの細菌学者として名高いロベルト・コッホ(1843-1910)のことであり、結核菌を発見するなど、当時の細菌学をリードする1人でした。北里は生涯彼のもとで学び、後年コッホは彼の招きで来日を果たすなど、師弟関係を超えた友情を深めました。

知的向上心は「学びたい」という誰もが持つ欲求であり、[7つの習慣」で紹介している人間の「4つの側面」の1つですが、その知的向上心が学びへの強い動機となり、卓越した成果へと結びついたのは疑いもないことでしょう。

しかもどんな些細なことにも、好奇心を持って徹底的に理解しようと努めたそうです。私たちのビジネスのさまざまな業務においても、知的向上心を忘れることなく貪欲に臨めば、成果につながる何らかのきっかけをつかむことができるのではないでしょうか。

(参考:『北里柴三郎の生涯―第1回ノーベル賞候補』、砂川 幸雄著、NTT出版)

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