古典に学ぶタイム・マネジメント
47回 ウォルト・ディズニー

20世紀のエンターテイメント界に多大な貢献をしたウォルト・ディズニー(1901-1966)は、常に大きなビジョンとミッションを心に秘め、世に多くの革新をもたらしたことで知られています。一介の漫画家としてキャリアをスタートさせたディズニーは、その後、どのような感覚で自らの仕事に取り組み、巨大な成功を掴んでいったのでしょうか。

●一般大衆を信頼する

昔、僕らが<ウサギのオズワルド>の版権をとられるというはじめての失敗を味わって、<ミッキーマウス>に移ったころからなんだが、それ以来ずっと固く信じてきたことがある。それは、一般大衆を信頼していくってことでね。……大衆はずっと僕の味方だった。<ミッキーマウス>を真っ先に認めてくれたのは評論家でも興行主でもなく、それは大衆だった。大衆の間で人気が出るまで、評論家の連中はひと言だって書いちゃくれなかったんですからね。……
で、それ以来、僕らは何をやるにしても直接、大衆の前へぶつけることにした。

これは、テレビ界に参入した当時のことを語るディズニーのインタビューです。その頃、テレビはまだ新しいメディアで、その発展をよく思わない映画興行主たちが、テレビには魅力的なコンテンツを回さないようにしていたような状況でした。そんな中、ディズニーはそれまで実績を積んできたアニメ映画ではなく、テレビ用のアニメ番組を制作することを発表、映画業界はもとより、エンターテイメント産業全体に激震が走りました。

この戦略はみごとに当たり、結果として、皆さんもよくご存じの「ミッキーマウス」は、一気に米国のお茶の間に浸透しました。このときのディズニーを支えていたのが「一般大衆を信頼する」という考え方だったのです。この発想は今なおサービス業における基本的なスタンスとなっており、かの有名な経済学者ピーター・ドラッガーも、常に「お客様は誰か」と問い続けることの重要性を説いています。

さて、現代社会に目を向けましょう。コールセンターに電話をかけても一向につながらず20分も待たされた。クレームのメールを送っても返答がない。オンラインで買い物をしたらパッケージと中身が違っていた。皆さんはこんな経験をしたことはないでしょうか。顧客にそんな思いをさせる企業に限って、企業理念やミッション・ステートメントには「お客様を最優先する」などと掲げていたりするものです。

約束をし、誠意をもって実行する。

日々、改革、革新が起こる混沌とした現代だからこそ、このことの重要性について、再考する余地があるといえそうです。

●自分の目に映ったままの絵を描き続ける

ウォルトは昔から絵を描くことが好きだったが、図画の時間でさえ、彼は先生を喜ばすことが出来なかった。
「みなさん、先生の机の上の花を写生してごらんなさい」
四年生のとき、担任の教師がクラスの子どもたちにこう言った。教室を一巡して生徒の写生ぶりを見ていた先生は、ウォルトの机の横で立ち止まった。画用紙には、人間の顔のついた花が描いてあり、葉っぱの代わりに腕が生えていたのである。先生の言うことに従わなかったということで、ウォルトはこっぴどく罰せられたのだった。それでも、ウォルトは自分の目に映ったままの絵を描き続けた。

こんなふうに、目に映ったままの絵を描き続けるということを、私たちの人生に置き換えれば、正しいと思った通りに行動し続ける、ということになるのかもしれません。

何をもって正しいとするか、一概に決められることではありませんが、自分のミッション・ステートメントからブレないことであったり、所属する組織のコンプライアンスを順守することであったり、さまざまなことが考えられます。

ミッション・ステートメントやコンプライアンスを実践するのは、決して容易なことではありません。まして、「前提は覆されるのが常識」となりつつある現代においては、変化への対応力がシビアに求められ、枝葉の部分にとどまらず、核心部分の微調整を余儀なくされるケースすら珍しいことではなくなりつつあります。私たちは、いったいどうすればいいのでしょう。

コヴィー博士は、著書『7つの習慣 成功には原則があった!』において、「自分の中に変わらない中心があってこそ、人は変化に耐えられる」と述べています。そう、自分の中にブレない軸があればこそ、私たちは一見、受け入れがたいような変化をも受け入れ、新たな事態に立ち向かっていくことができるのです。

自分の中の変わらない中心を見つめ、そこだけは何があっても絶対に守り抜くという強い決意と覚悟。そして、変化を受け入れ、革新を恐れない意志と勇気。今なお世界中で愛され続けるディズニーの足跡は、これからの社会を生き抜く上で欠かせない2つの要素を見事に指し示しているといえそうです。

(参考:『ウォルト・ディズニー 創造と冒険の生涯』、ボブ・トマス著、玉置悦子・能登路雅子訳、講談社)

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