古典に学ぶタイム・マネジメント|古典に学ぶタイム・マネジメント|77回 ハーバート・ノーマン

日本在住のカナダ人宣教師だった父の下、軽井沢で生まれたハーバート・ノーマン(1909-1957)は、長じてカナダの外交官となりました。日本の学者たちとも活発に交流を重ね、日本の歴史学者としての一面も併せ持つ彼は、第二次世界大戦後は米国からの要請を受けてGHQに出向、マッカーサーの通訳を務めています。そうした経緯から、戦後日本の民主化計画に携わるなど、終生にわたって日本とのかかわりが非常に深い人物だったといえるでしょう。在日カナダ大使館の図書館には「E・H・ノーマン図書館」と彼の名が冠されるなど、日加両国からその功績は高く評価されています。

●いよいよ実践する時期

 「三年間、財団が惜しみなく与えてくれたトレイニングを、いよいよ実践する時期に来たと知れば」彼ら(編注:ロックフェラー財団)は納得してくれるだろうと、財団も外務省も両方の顔を立てる表現をしていて、ノーマンの気配りの細やかさが、うかがえる。

これはノーマンが米国のハーバード大学を卒業し、カナダ外務省へ入省したときの描写です。
念願の採用通知を受け取った彼は、翌年度も受給が決まっていたロックフェラー財団からの奨学金を辞退しなければならなくなりました。そのため、それまでの3年間、お世話になった財団に対し、きちんと説明することで理解を得ようと努めたようです。
上記の引用を見ると、それまで受けてきた教育に心から感謝し、外務省で存分に力を発揮することによって、恩返しの貢献を果たそうと考えていたことが窺われます。
「7つの習慣」の提唱者であるスティーブン・R・コヴィー博士は、著書『7つの習慣 原則中心リーダーシップ』(キングベアー出版)の中で、貢献の重要性についてこのように説いています。
「人間の持ち得る最高の動機は個人の貢献意識である。(略)人間は意義ある貢献をしたいと考えており、才能を伸ばし、それを使って人から認められたいと思っている」
現代のビジネス・パーソンは、所属する企業に対してどのくらいの貢献意識を持っているものでしょうか。企業の相次ぐ不祥事がメディアを賑わす様子を見ていると、個々の意識が高いとはお世辞にもいえない状況にあるようです。
働く人々の貢献意識を高めるためには、まず企業自体が根底から変わる必要があるのかもしれません。非常に難しいことですが、現代の経営における最重要課題の一つであるといえるでしょう。

●自身のボイスを意識する

 私はいつも、自分が外務省にとってもっと役に立つようになるのは、広い経験を積むことによってだと思っていましたから、中東への赴任は大歓迎です。

これは、ノーマンにとって最後の赴任地となった、エジプトの首都カイロへの異動を受けた際のコメントです。彼はこの翌年、ソ連のスパイという容疑をかけられて投身自殺を遂げることになりますが、上の言葉からは、若い頃と変わることのない貢献への熱意や高揚感、彼自身の「ボイス」を確認することができます。
さて、現代のビジネス・パーソンが、自らの仕事において彼のような熱意や高揚感を獲得し、自身のボイスを発掘するにはどうすればよいのでしょうか。
前述のコヴィー博士は、著書『第8の習慣 「効果」から「偉大」へ』(キングベアー出版)において、このように述べています。
「人は、尊重されている、評価されていると感じる必要があると同時に、自分の仕事はコミットする価値があり、全力を尽くす価値があると感じる必要がある」
つまり、そこで働く人々の貢献意識を育むうえでも、熱意やモチベーションを高めるうえでも、それにふさわしい企業風土が不可欠だということです。
ビジネス・パーソンの環境づくり、貢献へのチャンスの整備という意味では、まずリーダー層がパラダイムを一新させて、組織の土台から見直す必要がありそうです。
それと同時に、自身の仕事に進んで「意義」や「価値」を見出そうとする、ノーマンのようなプロアクティブさもまた、個々のビジネス・パーソンに求められるところではないでしょうか。

(参考:『スパイと言われた外交官 ハーバート・ノーマンの生涯』、工藤美代子著、筑摩書房)

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