古典に学ぶタイム・マネジメント 63回 マーガレット・サッチャーに学ぶ

マーガレット・サッチャー(1925-2013)は、英国初の女性首相であり、「鉄の女」の異名を取ったことでもよく知られています。近年になって、彼女を題材にした映画が公開されるなど、リーダーシップを発揮した強い女性の象徴として、今なお影響力を持ち続ける存在といえるでしょう。女性の地位が今より格段に低かった時代に、英国史上初の女性首相となったサッチャー。彼女はいかにして闘い、成果を上げたのでしょうか。

●誇りに支えられてやり通す

法律の勉強を始めてから一年後、彼女は妊娠していることを知った。そこで、出産前に最初の試験にパスしようと努力を倍加した。彼女は双子を出産し、皆を驚かせた。(略)この入院中に、彼女は弁護士の第二次試験を申し込んだ。「今、入院中に申し込まなかったら、断念してしまうだろう。直ぐに申し込めば、誇りに支えられてやり通すだろうと考えたのを覚えています」と後に回顧している。四ヶ月後に最終試験を受け、見事にパスした。

このエピソードの2年前、20代半ばのサッチャーは、下院議員候補として出馬するも落選。自己研鑽の目的から、弁護士資格の取得を目指します。

伴侶にも恵まれ、順調に試験への準備を進める中、妊娠が判明。そのまま延期せずに一次試験を受験して合格すると、双子を出産後すぐに最終試験の準備を進め、なんとワンチャンスで弁護士資格の取得に成功してしまいます。

生まれて間もない子どもたちの世話もあり、おそらく満足な学習環境にはなかったはずですが、選択と集中を徹底した結果、大きな成果をものにしたというわけです。

子育ての負担を軽減するため、サッチャー夫妻は両親の住むアパートの隣の部屋に引っ越し、さらにベビーシッターも雇うなど、サポート資源を上手に活用しています。

そうまでして過酷な道を突き進んだのは、一度、選挙に敗れた自分には何らかの武器が必要であること、そして、弁護士資格をどのように活用していくべきか、そのビジョンが彼女にはしっかりと見えていたからでしょう。

●コンセンサスの政治はしない

マーガレット・サッチャーは一人で決意した。デニス(編注:サッチャーの夫)にしか相談しなかった。決心すると、まずエドワード・ヒース(編注:当時の現職党首)をウエストミンスターの執務室に訪ね、その旨を伝えた。この不遜な男性の世界で、それは普通行われない事であった。面会は数秒で終わった。ヒースは椅子にかけるようにとも言わず、高飛車な態度で彼女を遇した。彼女の挑戦を真面目に受け取っていなかった。「党委員長の私は、彼女が危険なライバルになり得るとはいささかも考えていなかったし、そう考える人も誰もいなかった」と後にホワイトロー(編注:サッチャーと党首選を争った政治家)は語る。

これは、サッチャーが保守党の党首選に立候補することを決めたときの描写です。引用部からもわかるように、ほとんどの議員は彼女のポテンシャルを全く認めていませんでした。男社会の政界で、当時、どれほど女性議員の立場が弱かったか、サッチャーの苦労がしのばれるエピソードです。

しかし、そんな逆境にあっても、彼女には成すべきことがありました。それは英国を改革すること。

「私はコンセンサスの政治はしません。私がするのは信念の政治です」

女性差別も、さまざまな困難も、こういう確固たる思いあればこそ、打開していくことができたのでしょう。

「7つの習慣」を提唱した故スティーブン・R・コヴィー博士はその著書の中で、「ビジョン」という言葉を用いて、このような信念を持つことの重要性を説いています。

「ビジョンは、人生のすべてを動かす原動力である。ビジョンを通して自分にしかできない貢献を自覚し、情熱を持つことができる。人生に対するより大きな意味を持って生き、愛し、学んでいくうちに、自分に残せる最大の遺産は『ビジョン』であることに気づき始める」(『7つの習慣 最優先事項』〔キングベアー出版〕より)

鉄の女と呼ばれたサッチャーのように、自らのビジョンを自覚した人間はとことん強くなれるもの。ビジョンをより研ぎ澄ますことによって、日々の仕事の質を劇的に変えていくことが可能になるかもしれません。

(参考:『マーガレット・サッチャー「鉄の女」の生き方』、カトリーヌ・キュラン著、渡辺美紀子訳、彩流社)

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